COLUMN

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不動産専門誌「住宅新報」掲載コラム“定期借地権付きマンション”不動産専門誌
「住宅新報」掲載コラム
“定期借地権付きマンション”

執筆 : 殿木真美子(とのきまみこ)

執筆 : 殿木真美子(とのきまみこ)

住宅ジャーナリスト。雑誌の編集者を経て、フリーの編集者・ライターに。
2005年から住宅・不動産分野に注力。住宅・不動産の専門紙「住宅新報」で80回の連載を数える「細野透×殿木真美子 旬な作品=住宅レビュー=」を共同執筆していた。10年ほど前からマンションの管理組合や自治体などコミュニティ活動の取材に力を入れている。

高騰するマンション価格高騰する
マンション価格

 このところの住宅価格の高騰で「とても家を買う気にはなれない」という人が多い。特にマンション価格の値上がり率はすさまじく、「バブル期を越えた」ともいわれて話題になった。

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 しかし、広告を見ていると時折「あれ?」と目が留まるような安い価格で販売されているマンションがある。おそらくそれは「定期借地権付きマンション」(以下、定借マンション)だ。

 周辺相場より20%ほど割安な分、その後の生活にゆとりが生まれる定借マンション。期限が来たら土地を更地にして返すというのも、合理的な考え方だと思う。メリット・デメリットをよく知り、その合理性に納得できる人には、一考の価値がある。

定期借地権付きマンションとは?定期借地権付き
マンションとは?

 定借マンションとは、どのようなものだろうか。あまり聞いたことがない、もしくは聞いたことはあるけれどよくわからない、という人がほとんどだと思う。

 定借マンションは、平成3年施行の新・借地法により供給することが可能になった。前もって定められた期間(最低でも50年以上)、所有者から土地を借りて、その上にマンションを建てて利用する。そして期間満了時に原状回復、つまり建物を壊して更地の状態で土地を返す、というものだ。

 新・借地法は、バブルが崩壊する頃に制定された。これは、「土地は永遠に価値が上がり続ける」と信じられてきた昭和の土地神話が、バブルの崩壊と共に崩れ、時代の流れが「土地は所有するものではなく利用するもの」との転換点に立ったことを表していた。

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メリットとデメリットメリットとデメリット

定借マンションのメリットとは。

 ズバリ「価格の安さ」である。土地代がかからない分、分譲価格を低く抑えることができるのだ。

 国土交通省の資料によると、これまでの定借マンションは、一般の所有権マンションと比べ平均して2割程度安価で売られている。しかも、土地分の固定資産税を払う必要もない。

 また、住宅ローンを利用する場合は、取得価格が安価なことで、金利分の支払いを抑えられるメリットもある。更には、価格を抑えやすいため、専有面積を広く取りやすいメリットも。「好立地にも関わらず広くて割安なマンションが買える」というのが、定借マンションの最大のメリットだ。

 土地は借りるが建物は所有するため、専有部分のリフォームなどは可能。所有権マンションと同様、管理規約などの定めに従えば、問題ない。加えて、賃貸に回すことも、売却することも問題なくできる。

一方デメリットは

 毎月掛かる地代と解体準備積立金が挙げられる。管理費・修繕積立金は所有権マンションと同様に発生するため、ランニングコストの種類が増えるわけだ。

 引き渡し時に、一括で権利金や前払い地代などの一時金を支払う必要もある。ただし、先に述べた「分譲価格が2割安価」というのは、「これら一時金も加味した上で全体の購入価格が2割安い」ということだから、一時金についてはあまり心配する必要はない。

結局どちらが得なのか?

 「価格が安い半面、ランニングコストの種類は多いとなると、結局どちらが得なのか?」と思う人も多いだろう。こればかりは、具体的な物件同士で比較するしかないが、総じて定借マンションの方が割安となるはずだ。それほどまでに、分譲価格が2割安価であることのインパクトは大きい。

売却のしやすさと土地の契約期間売却のしやすさと
土地の契約期間

 マンションならば、売却のことも頭に入れておいた方がいいだろう。定借マンションのもう一つの特徴は、期限が設けられていることだ。定借マンションは、最低でも50年以上の期間を確保することが法律で義務付けられているが、売却することを念頭に入れた時、50年では短い、という声もある。

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 なぜかというと、例えば、新築の定借マンションを買って35年住んで売却する場合、新たな買主が住宅ローンを組もうと思っても、建物の残存期間は15年だから、15年のローンしか組めないことになる。これがネックだと考える人もいる。ただ、実際には、定借マンションの場合、やはり近隣の中古物件よりも価格が安いため、ローンを組むにしても期間が短くて済むわけだから、中古市場でもきちんと流通しているのが現実だ。

 更に最近は、期間が60年、70年という長期の定借マンションも増えてきている。70年なら35年ローン2回分。期間をネックに思う必要は全くなくなる。

マンション管理組合を取材してマンション管理組合を取材して

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 話は変わるが、マンションの管理組合の取材を続けていて最近よく聞くのが、「修繕積立金の値上げでもめた」という話だ。修繕積立金とは、マンションの大規模修繕をするときのために住民全員で積み立てていく資金のこと。これが足りなくなり、管理組合で値上げをしようとして、住民間でもめることが結構ある。

 なぜこんなことになるのか。実は、修繕積立金は、引き渡し当初は低く設定されていることが多い。最初は大きな修繕が必要ないから。それを段階的に増額していく想定で、修繕計画を立てているマンションがほとんどだ。

 しかし、実際に値上げをするためには、その都度、管理組合で決議する必要がある。これが、かなり高い壁になっている。ランニングコストが上がることを嫌がる人が多いためだ。ゆえに、値上げを見送り続けた結果、いざ大きな修繕をしようと思っても積立金が足りない、ということになる。

マンションの〝着地点〟マンションの
〝着地点〟

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 更に時間が経過すると、もっと大きな岐路にぶつかることになる。修繕を続けて建物を使い続けるのか、それとも思い切ってマンションを建て替えるか。俗にいう「建替え問題」だ。

 どのマンションも、いつかはぶつかるのが、この問題だ。これに真っ正面から取り組んでいるマンションを取材するたびに思うのは、「マンションの着地点に対する考え方は十人十色で、合意には相当の努力を要する」ということである。

 ある人は、お金を出してでもマンションを立て替えて再生したいと考える。またある人は、高齢だし資金もないし、自分が生きているうちは無茶なことはしたくないと考える。しばらく住んだら売却しようと思っている人もいるだろうし、はなから賃貸に回している人もいるだろう。これでは、話し合いは平行線のままだ。

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 なぜこんな話を始めたのかというと、定借マンションは「あらかじめ着地点が決まっている」という点で、住民が合意を形成しやすいと考えるからだ。建物の消費サイクルが前もって決まっているため、あとはその期間を快適に過ごすことに議論を集中させられるのだ。着地点が決まっていると、最ももめる原因となるお金の話も、振れ幅が小さくて済む。

 そういう意味で、定借マンションはとても合理的だと考えている。

 以上、定借マンションの魅力は、「合理的な価格で希望の商品を購入できること」と、「あらかじめ着地点が決まっているため、合理的に建物と付き合っていけること」の2点に集約される。これらの合理性に納得できる人には、選択肢の一つとして大いに検討の余地があるだろう。

※掲載のCG画像・イラストは計画段階の図面に周辺の感局状況を付加し、描き起こした物で実際とは異なり、今後変更になる場合がございます。設備機器・配管類等は一部簡略化しております。なお、植栽は特定の季節の状態を示すものではなく、竣工時には完成予想図程度には成長しておりません。樹木の種類等は変更となる場合がございます。敷地周辺の建物・電柱・標識・架線・ガードレールは再現しておりません。